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まおじゃらん

着物と猫と、ときどき絵画。

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着物の値段と価値

ごきげんよう




しばらく前、たまたま着物(この場合は帯)のメーカーさんと話をする機会があったので、忘備録のつもりで書き留めておきます。


 

画像は、誰と何時どこで食べたのかさだかではない、ケーキ。本文とは関係ありません。


そこで商うお品は、帯でした。イチオシは、普段用(この場合、礼装には向かない、おされ用の意味)の袋帯(しゃれ袋帯)。ただのしゃれ袋帯ではありません。
袋帯の形態をご存知の方にわざわざ説明するまでもないのですが、かつて帯は丸帯で、幅の広い(約68センチ)一枚の布地を半分に折って仕立てたもの。そして現代の女性用の袋帯は丸帯を簡略化したもので、裏を無地にすることにより軽く織られた帯。格の高い柄の織り帯は礼装用に、軽い柄の帯はお洒落用にと幅広い用途で用いられ、幅は約31㎝(鯨8.2寸)、長さは4m17cm(1丈1尺)以上で、2重太鼓結びにする長さがある。。。とwikiにあります。初めから丸帯の半分の幅に、表裏別々の布を縫い合わせることによって、作り方もラクになりお値段もリーズナブルになった。。。と解釈できるようです。
しかしそこのイチオシしゃれ袋帯は、袋帯の幅にひとつなぎで(裏表を縫い合わせないで)筒状に織り上げたものなのでした。丸帯を作る要領で幅は袋帯。。。その技術はとても難しいそうで、よってお値段も高い。。。どのお品にも100万円以上の値札がついていました。
「へえぇぇぇ」などと説明を受けながら、な~んとなく腑に落ちない気持ちになったわたくし。
世の中にはさまざまな価値観があるものでございますわな。
「これこれの技術があるからお値段はこれこれ」であることを良しとする価値、「これこれのコストを省いてお値段はこれこれ」であることを良しとする価値。どちらもそれぞれのヒトがそれぞれに判断するのですから、正しいも誤りもないでしょう。着物を着ない人によっては、何十万もする着物は無駄だと感じますが、しょっちゅう着る人にとっては洋服と違って何十年も着られるのはリーズナブルだと感じる。そもそも基準点が違うので、比べようがないのです。
では100万円以上するしゃれ袋帯とは。
。。。先人が考えついた「軽くて使いやすくてリーズナブル」な通常の袋帯とは別の視点に立った製作姿勢です。
『軽くて使いやすいけど技術が難しいので高価』
これと似たようなものを知ってる気がする。。。あ、ユネスコ世界遺産にも登録された、本場結城紬だ。。。でも結城紬は、高価だけどとても丈夫で何代も何代も持つというウリもあったはず。。。
「これは申し訳ないけどわたしたちのような平民がちょっとおされしたくて買うにはあまりに高過ぎるのですが、どういう消費者を念頭に作ってらっさるんですか」
すごく意地悪な質問かもしれない。。。けれど、売る側の答えは何とも平凡、だけど驚きでした。
「いえ、作るのに手間がかかるのでこのようなお値段になったので、このような高い技術を評価してもらいたいと」
「今、着物を着たい人は実は案外増えているのですが、そういう人はこういったものを買いません。買えないと思います。高いから良いものだから、というのは作る側の事情であって、買う側には買う側の事情がある。このようにお値段が高く技術に価値があるものならば、長く使いたいと考えたりするものですが。。。たとえば結城紬が何代にも持つようにね。でもこのお品は堅牢度がひどく低い気がしますが。。。その辺はいかがお考えでしょうか」
「。。。そんなにたくさん、たとえば脇が刷れてしまうほど使ってもらえるとは思ってないんですが」
「。。。では、この帯は、あまり使わないでしまいこんでおけ、と?着物好きで着物をたくさん着たい人は、気に入ったものを気に入っただけ使いたいと思いますけど、そういうユーザーがいるとは考えないんですか?」
「今の方はそんなに着物を着たりなさらないので、そういうことは考えなかったですね」
てな具合に、もはや着物を作る側売る側が、着物はたくさん着るものではないと考えているんですな。正直な方でらしたが、こちらはもう驚くしかない。
たくさん着るものでなければそうそう数は売れない。だから1枚単価が高くなる。すると着物は高いから買えないし要らない。。。悪循環の始まりはこんなところにもある気がします。
そこへわたくしの担当さんが登場。
「私も、売る側でこう言っちゃナンですが、こちらの帯にどんな存在意味があるのかわからないんですけど」
「ちょっと待て、アナタが言うな。そもそもこれをどうやってお客さまに勧める?」
と、わたくし。すると担当さんは、
「う~ん、キビシイですね。ホントにどういう風に言えばいいのかわからないので、納得させてもらいたいんです」
すると帯のメーカーさんが、
「やっぱり。。。この技術はとても難しくて、表地と裏地を縫い合わせてない分、軽くて絞めやすいと。。。」
「でも。アナタは着物なんか、着ないんでしょ?軽い軽くないの基準なんか、個人差がある。着ない人が何を判断すんの?スペックで売れると思ってるのは男の理論でしょう」
何だかもう、売る側のヒトとは永遠に話が通じない感じがして、いらだったので、つい激しく言い放ってしまったわたくし。
「それを言われると返す言葉もないんですが」
若干気まずい雰囲気になったところで担当さんが、
「ああ、でも。。。世の中はホントにわからないことばかりだとは思いますよ。お客さまには、お値段が高いからっていう理由で、それを選ぶ方もいらっさる。とにかくまず、お値段が高いことが重要なんです」そう言って、過去にどんな「お値段重視のお買い物」があったかを話す。
「。。。それはミラクルな世界だな」とわたくし。
「。。。そうですね」
「。。。でもそれなら、この帯はそういう人にだけ売れればいいんじゃないですか?」(←わたくしは意地悪)
「そりゃ確かに、そういうお客さまには売れますよ。1枚は」
と、担当さん。
「でもそれだけじゃ駄目だから、こうして頑張っている訳で」
「まああ。どうぞ頑張ってください。ワタシとは無縁のところでお願いしますよ~」
「ところで、この帯、たまさんならどうしますか?」
「色柄が気に入れば、1/5以下のお値段なら、買ってもいい」(←エラそう)
「3割引きくらいにはなりますが」
「今、ここにある色柄ならば、申し訳ないけどワタシはタダでも要りません。ナマイキ申し上げてすみません。ごめんなさい、さようなら~

深くアタマを下げて、そこをあとにしたのでした。

そうしてのち、わたくしは担当さんに向かって言いました。
「。。。っつーかさ、ワタシに要らぬもの見せないでちょうだい、知ってる癖に~。要らぬ喧嘩する羽目になっちゃうじゃないのさ~。ワタシはワタシに関係ない世の中には決して触れないように、外側からのぞくだけにして地味にひとりで楽しくおとなしく生きてるんだからねっ」
「えへへ。私と同じように感じてくれるかと思って。同じような考えなんですね。良かった」
どうやらわたくしの担当さんは、自分のもやもやした気持ちをヒトをダシにして解消したようです(苦笑)でも、わたくしの本音は、わたくしが気に入ったものを、買って良かったと思えるものを手に入れられればいいのであって、着物業界が今後どうなろうとわたくしの知ったことではございません。そして自分が多数派になる気もないので、若干の不便を感じつつ生きるのはすでに慣れっこなのでした。
まあ、いろいろさまざまな考え方がありますからね。。。価値観の違いは案外、大きなカルチャーギャップを産むものでございます。
ところで、100万円のお値段ですが。。。あるところにあれば100万円は決して高いものではない。。。のは現実です。手描き友禅の訪問着などにたまに見掛けますし、大島紬でもよくある値段、結城紬に至っては重要文化財ものはあと丸1個増やさないと買えないですし。100万円とは、大学の学費にもクルマ1台にもならず(中古車等のぞく)、でも家族4人の食費にしたら相当喰える。。。現代日本に於いては、かように微妙な金額でございます。だから、あの帯が100万円くらい。。。なのかも知れません。年収に匹敵するようなら、さすがに誰にも相手にされなくなるのでしょう。

この駄文に、結論などございません。
読んだ方がどうぞ勝手に考えてください。

いつも読んでいただいてありがとうございます。


https://fashion.blogmura.com/kimono/


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Comment

No title 

痛快です。
そして私のように何も知らない分からないではいかんなあと…
ふー。
  • posted by ほあかばりきるま。 
  • URL 
  • 2014.03/22 21:47分 
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No title 

ははははは(^^;)ちょっと、絵画と似たとこありますな!?油絵は歴史的に劣化しても資産として引き継ぐことは出来ますが、アクリル画はまだ、持つことが照明されてませんし、紙に描いた絵は重文クラスにならないと、手厚いほごなんてしてもらえないし下手すると画家が生きているうちに破損します(←たまさまには釈迦に説法ですが。。。苦笑)それでも、お気に入りの絵は画家が一生懸命描いた?からって理由で素人でもけっこう半端ない値段で売ってます!ちなみに、私は海外展開狙ってるので、現地の画廊さんと相談して将来のため高すぎず安すぎず。。と言われた値段で売っていますが、小遣いとしてはずいぶん高いけど、企業さん(なんと、私の作品が欲しいそうな。。。帯みたいな付加価値はないぞ~)が買うには安いよね。って値段です(笑)いつか有名ブランドとコラボしたい。できれば着物ブランドとコラボしたい!!!と言うのは夢なんですよ(笑)でも、ブランドものになったら、たまさまが今回の着物につっこんだようなやり取りがなされるのかなぁ~と妄想フツフツで生きています。画家に妄想は欠かせません(^^;)
  • posted by K-mana 
  • URL 
  • 2014.03/22 22:32分 
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No title 

たまさんあっ晴れ!
古い考え方の呉服屋さんを撲滅しないと日本に着物文化は悪循環で廃れてしまいます。
古着屋リサイクルばかりや、化繊の着物にばかり走る今どきの傾向も許しがたいところではありますが、手仕事の伝統文化も適正な状態で伝承出来るような仕組みがないものでしょうか…。
末端の呉服屋ばかりがぼろ儲けっていう構造がそもそも間違いだ!!!
  • posted by piyopiyo_fiona 
  • URL 
  • 2014.03/23 08:01分 
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No title 

たまさん、こんにちは。

>さだかではない、ケーキ。本文とは関係ありません。

すみません、これ↑がツボにはまってしまっております。。。ククク。。。

着物屋さん、と言えば、お着物を着るようになるまでは、全く接点がなく過ごしてきましたが、昨年娘が結婚式を挙げる前にちと立ち寄った呉服店で若いお兄さん(店員さん)に声をかけられまして。。。その時は重ね襟を所望し、簡単に売買が終わるところでした。すると先輩店員さん(これも若いお兄さん)がやってきて、嫁がれる娘さんにはぜひ喪服を!と言う話をされそうになりました。

こんな理由で必要なのだ、と言うことを語られかけたのですが、いかんせん、アタクシ自身、夏冬持っておりますけど、数十年タンスの肥やし。もったいないを痛いほど感じて来ました故、丁重に辞退した次第でございます。

着物に限らずですが(着物は特に価値観の相違があると思います)、価値観の押し付けは辛ぅございます。無用な喧嘩、する必要がないのであれば、したくありませんものね。撫松庵のファスナー&フリル、よろしくお願します。。。
  • posted by ふでぺん 
  • URL 
  • 2014.03/23 09:47分 
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No title 

こんにちは。
ちょっとご無沙汰していました。
今読ませていただいて爆笑でした。
たまさんの感じ方好きです。
亡くなった私の姉、250万の留袖を買って、娘に聞いてみると今はもうにないようです。多分質屋に持って行ったのでしょうね。
そんな身分でもないのに何でそんなものを買ったのか?
女心の不思議ですね、そうしてそういう気持ちの隙間を狙って売るというのがテクなのかな~~と思います。
  • posted by mipotan 
  • URL 
  • 2014.03/23 20:09分 
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